artscapeレビュー
2014年01月15日号のレビュー/プレビュー
フォスター卿の建築術
アップリンクから『フォスター卿の建築術』のDVDが出るのに併せて、テキストを依頼された。その時初めて見たのだが、とても面白い。子どものときに初めて描いたドローイングが飛行機で、自分が建築家として働きながら空を飛ぶ感覚を味わっていたという。映画の『風立ちぬ』を思い出すエピソードである。ベルリンのラヒスタークに関して、興味深い話があった。当初、フォスターは議事堂を覆う巨大な大屋根を提案していたが、コストがかかり過ぎるということで没になり、ドームの復元が要求されたらしい。が、たんに過去の再生では納得がいかないから、現在の環境共生型のガラスのドームになったという。
2013/12/15(日)(五十嵐太郎)
Li-Ren Chang(張立人)展「古典小電影」
会期:2013/12/16~2013/12/27
YOD Gallery[大阪府]
台湾の映像作家が日本初個展を開催。出品作品《古典小電影》シリーズは、名作絵画やポスターの女性たちが服を脱いで裸になるもので、名称は台湾の戒厳令時代に上映されていたポルノ映画に由来する。作品の真意は、戒厳令時代に人民と政府が口裏を合わせたかのように規範的な日常を送り、社会の矛盾に目をつむっていたことへの言及であり、少女が服を脱ぐ過程で作品と観客の内面に発生する矛盾を明らかにすることだ。有名な絵画の主人公たちが表情を変えずに服を脱いでいくことには驚かされたが、欲情するほどのエロさではない。むしろ、不自然な動作とシチュエーションが醸し出す滑稽さこそが、このシリーズのキモではないかと感じた。
2013/12/16(月)(小吹隆文)
クヴィエタ・パツォウスカーとチェコの絵本展
会期:2013/12/06~2013/12/27
美術館「えき」KYOTO[京都府]
チェコの女性絵本作家、クヴィエタ・パツォウスカー(1928- )とチェコ絵本の世界を紹介する展覧会。「絵本」というと、ふんわりと優しく、穏やかな気持ちになれる本(絵)を想像する人が多いはずだが、彼女の作品は強烈な色彩と幾何学的造形といった、絵本の概念を超える斬新なものが多い。時にはフォーヴィスムを、時には構成主義を連想させる。パツォウスカーは「(絵本の)絵は文章の説明ではない。それ自体、視覚表現である」と言っているが、まさにそのとおりで、子どものためというより、大人のための絵本という気がした。本展ではパツォウスカーの代表作とともに、チャペック兄弟やヨゼフ・ラダなどの作品によって、パツォウスカーを育んだチェコ絵本の歴史を知ることもできる。[金相美]
2013/12/17(火)(SYNK)
対話の可能性 LOVERS 永遠の恋人たち
会期:2013/11/07~2014/01/12
せんだいメディアテーク 6Fギャラリー[宮城県]
せんだいメディアテークにて、故・古橋悌二が参加していたダムタイプの展示を見る。「LOVERS 永遠の恋人たち」の静謐なインスタレーションほか、「S/N」が上映されていた。両方とも懐かしい。メディア・アートもそう感じる時代を迎えた。ダムタイプは、西洋人とは異なる、日本人の身体をうまく使い、映像と身体表現のパラダイムをつくり出したと思う。
2013/12/18(水)(五十嵐太郎)
ニッポンの少女まんがの元祖だヨ!:松本かつぢ展
会期:2013/10/03~2013/12/24
弥生美術館[東京都]
抒情画家、童画家、グッズ・デザイナーとして活躍した松本かつぢ(1904-1986)の作品展。画家として手がけたジャンルの多さと、その表現様式の多彩さに驚かされる。本展でとくに焦点をあてられているのは、少女漫画家としての松本かつぢ。最近の調査で、かつぢが昭和初期から先駆的な漫画作品を描いていたことが明らかになってきたという。『少女の友』昭和9年4月号付録漫画「?(なぞ)のクローバー」のヒロイン「フクメンサン」のかっこいいこと。昭和初期のストーリー漫画は田川水泡ぐらいしか知らなかったのであるが、同時代の漫画家たちと比較したかつぢ作品の立体的な描写、躍動感溢れる紙面構成のすばらしさは、すでに漫画評論家・夏目房之介が指摘しているところ
2013/12/19(木)(SYNK)