artscapeレビュー
2014年01月15日号のレビュー/プレビュー
野口英世記念館
[福島県]
野口英世記念館を訪れた。野口の生家をそのまま保存し、上に大屋根をかけて保存しているダイナミックな空間である。ただ、個人的に野口は貧しい農家というイメージをもっていたが、ちゃんと保存すれば、120年はもち、しかもそれなりに大きい家だった。
2013/12/06(金)(五十嵐太郎)
ギャラリストのまなざし──Management for Artists(大阪芸術大学グループ 美の冒険者たち なんぱパークスアートプログラム vol.10)
会期:2013/11/29~2013/12/08
なんばパークス[大阪府]
大阪芸術大学出身の若手ギャラリスト6名が計10名の作家を紹介する大阪芸術大学主催の展覧展。訪れた日は、出品作家の田口美早紀によるワークショップとともに、今展のコーディネーター山中俊広氏と4名のギャラリストによるトークイベント「ギャラリーの現場で学ぶアートマネージメント」が開催されていた。会場に展示された作品は、写真、平面、立体等ジャンルもさまざまだったのだが、トークではそれぞれの解説とともに、紹介された作家や作品にまつわる各ギャラリストの視点、アートの現場に携わる「裏方」としてのスタンスなど、普段展覧会という表舞台の場ではあまり聞くことができないだろう内容が繰り広げられた。作家とともにアートマネジメントに関わる人々、その仕事にアプローチするこの企画の意義、今後のアートシーンを担う若いギャラリストの言葉など、それぞれ展望が感じられたのが貴重な機会だった。
2013/12/07(土)(酒井千穂)
東島毅「キズと光が重なる」
会期:2013/12/02~2013/12/07
ギャラリー白[大阪府]
ドローイングや小品のシリーズが展示されていた東島毅展。伸びやかで、迫力みなぎる色彩や表情豊かな線、その自由なタッチが壮快で目にも心地よく、インスピレーションを刺激してやまない。力強い大画面の作品も印象に残るものだが、ドローイングの魅力も凄いと思い知った個展。
2013/12/07(土)(酒井千穂)
荒木経惟「人妻ノ写真」
会期:2013/11/08~2014/01/19
RAT HALL GALLERY[東京都]
荒木経惟が1998年から『週刊大衆』誌に連載している「アラーキー不倫写 人妻エロス」は、実にとんでもないシリーズへと化けつつあるのではないか。そのことを、まざまざと思い知らせてくれる展示だった。
会場には、下腹、太股をたぷたぷと波打たせ、陰毛をこれ見よがしに誇示し、染み、皺、妊娠線何でもありの、妙齢の女性たちのヌード写真がずらりと並んでいる。やや太めのモデルが多い、大伸ばしのプリント展示(20点)もよかったが、なんと言っても圧巻なのはキャビネサイズのプリントを縦24列、横21列、全部で504枚並べた「女体壁」だった。各プリントの一部には、赤、ピンク、青、緑、黄色などのペンで何やら危ない形状の物体を描いたドローイングが施されている。すべて日付入りのカメラで撮影しているということは、荒木はわざわざ「人妻エロス」の撮影現場に、日付を写し込む機能がついたコンパクトカメラを持ち込んでいるということになる。以前、モデルの首から上を全部カットした写真だけで構成された『裏切り』(2004)という写真集を発表したことがあるが、「人妻エロス」は彼にとって、さまざまな過激な実験を試みるラボラトリーとしての役目も果たしつつあるようだ。これからもその派生形が次々に登場してくるのではないだろうか。
それにしても、今さらではあるが、なぜこれらの人妻たちは荒木のカメラの前に裸身を曝したいと思ったのだろうか。そこには単純な欲望や好奇心を超えた、不気味なほどに理解不能な衝動が渦巻いているような気がする。怖いもの見たさではあるが、その正体を確かめてみたい。なお、展示された写真から140点あまりを選んで収録した同名の写真集が、RAT HALL GALLERYから刊行されている。
2013/12/07(土)(飯沢耕太郎)
ブルーノ・タウトの工芸──ニッポンに遺したデザイン
会期:2013/12/06~2014/02/18
LIXILギャラリー(大阪)[大阪府]
ドイツの建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)が日本でデザインした工芸品、家具、デッサン画など約60点を展観している。タウトは、1933年から約3年半にわたって日本に滞在した期間を「建築家の休日」と呼び、日本の芸術文化について広く見聞、熟考した。この間、『ニッポン』『日本美の再発見』『日本文化私観』等に代表される著述活動に励んだだけでなく、工芸品の製作に取り組んだ。まず仙台の商工省工芸指導所でデザイン指導を行ない、次に大倉陶園のアドバイザーに従事した。そして、群馬県高崎市郊外にある少林山達磨寺の「洗心亭」を居住の場に定め、井上房一郎の招きによって井上工芸研究所の工芸デザインを担当するようになる。彼のデザインした工芸品は、東京・銀座の工芸店「ミラテス」で実際に販売された。本展で中心をなすのは、これら漆器、木工、竹製品の工芸品である。木工品は木を素地のまま用い、木目が見えるよう透明なラッカーをかけてある。木製のパイプ掛付煙草入れなどを見ると、職人の確かな手技が細部まで発揮され、美しい曲線を描いた形に魅了される。そのとおり、タウトのものづくりへのこだわりは職人泣かせであったという。また漆塗りの筆入れには、黒地に鮮やかな縞の彩色が映え、カラリストであるタウトの本領を垣間見ることもできる。彼は出展品の《竹の電気スタンド》のように、日本の伝統的な素材である「竹」を使ったデザインを多く残している。素材の特性をいかすことに配慮され、形や色においてはタウトの繊細でいて鋭い感覚が見て取れる。日本工芸の未来に対するタウトの真摯な思いが伝わってくる展覧会である。[竹内有子]
2013/12/08(日)(SYNK)